声明文
声 明

本日、群馬の自然を守るネットワークは、県営倉渕ダム計画の重大な問題点を新たに指摘し、即刻凍結をここに求める。
私たちが進めてきた現地調査により、信越線下流の下豊岡町と北久保町(R1ブロック)において、県が想定しているような氾濫は発生しないことが明らかになった。県はこの氾濫を想定することで費用対効果を1以上にし、倉渕ダム建設事業の正当性を主張してきた。
今回の問題は、先の文書差替え事件における買収用地費単価の破格な設定と同様の情報操作であり、私たちは強い憤りを抱いている。

また、県の単独河川改修案は、過大な買収用地面積の設定をしているにも拘らず、ダムよりも事業費が安くなっていることが判明している。

建設推進の最も重要な指標である費用対効果と事業費において、倉渕ダムは建設根拠を失った。多目的ダムである倉渕ダムの総事業費の87.9%が治水目的であることを考えれば、直ちにダム計画を凍結し、烏川の治水利水について再検討すべきである。

2003年11月14日
群馬の自然を守るネットワーク

 
 意見書

2003年11月14日   

       群馬県知事 小寺弘之殿

群馬の自然を守るネットワーク 
          代表世話人; 大塚一吉 武井謙司 田島三夫 山際義隆 


意  見  書
― 倉渕ダムは即刻中止を ―

県が想定しているR1ブロック(主に北久保町、下豊岡町)の氾濫は起こらない
 県は倉渕ダムがない場合の氾濫ブロックとして6ブロックを設定しています。このうちR1ブロックは烏川の信越線の鉄橋から上流約150mの地点で溢水し、北久保町、下豊岡町(国道18号を越え碓氷川と烏川が合流する地点まで)が氾濫すると想定されています。1/20確率で52.8ha、1/100確率で59.8haとなります。 クリック
 下豊岡町は無堤地区であるため県の想定どおり上記のような氾濫が起きると私たちも考えていました。しかし当ネットワークで現地調査を入念に行ったところ以下のことが判明しました。治水基準点の君が代橋から信越線が通る橋までは堤防が整備されています。この堤防と交差する信越線の盛土(土手)は烏川の堤防と同じ高さで国道406号線方向に伸びています。交差箇所は盛土がほぼ直角に連続しており隙間はありません。またその地点の信越線の土手は天端幅約30mで強固です。このため烏川の氾濫水が北久保町へ行くことは物理的にあり得ません。(写真参照)
 想定氾濫区域の計算においては各メッシュ毎に地盤高を算出します。治水経済調査マニュアル案によると、その際氾濫状況に大きく影響する連続盛土等の構造物についても考慮する、とあります。当然この信越線の盛土は地盤高としてみるべきなのに完全に無視されています。現実の地形を無視した、ダムを造らんがための詐欺的行為と言わざるを得ません。平成12年8月と平成13年10月の県作成の倉渕ダムパンフレットではR1ブロックは設定されていません。

費用対効果は0.2以下になることは確実である(県は現在1.37としている)
 写真で分かるとおり、1/20確率の洪水の場合の水位は現況の堤防天端高より約2.5mも下にあり、氾濫水が烏川の堤防と信越線の盛土を乗り越えて北久保町方面へいくはずがありません。また信越線の盛土はこの程度の洪水で崩れることはありません。
 1/20確率の洪水におけるダムがない場合の氾濫ブロックは、R1が52.8ha、L2が6.0haで合計58.8haです。県の費用対効果の計算では、その58.8haでの被害額は649億円、期待額は16億円/年と算出されています。期待額は全体で25億円/年であるので、R1とL2でその64%を占めることになります。(費用対効果分析結果参照)
 そこで、1/20確率の洪水におけるダムのない場合の被害額を仮にゼロとすれば(L2の6haと下豊岡町の信越線の上流部約2haでは被害を受けると思われますが、面積が小さく被害額の割合はかなり少ない)、倉渕ダムの費用対効果は0.19となります。実際には、R1ブロックでの氾濫は1/30確率から1/100確率においても起きない可能性が高いので、費用対効果は0.19よりさらに小さくなります。

費用対効果
 費用対効果とは、その公共事業が、かける費用に対して効果がそれを上回っているかを判断する数値で、分母を費用、分子を効果(便益)として計算し、1を上回ってなければ公共事業としては行わないという判断基準にするものであります。
 倉渕ダムの場合、総費用はダム事業費(治水費)とダム完成から50年間の維持管理費を現在価値化したものの総和で285億円とされています。これに対して便益は、洪水流量を確率年1/10から1/100まで段階的に設定し、ダムがある場合とない場合の洪水氾濫による被害額を計算し、その差を基に確率計算を行い算出します。倉渕ダム計画では、R1ブロックとL2ブロックにおける確率年1/10から1/20の洪水での便益が大半を占めています。(費用対効果分析結果参照)
 河川課は昨年6月にダムがない場合の氾濫面積を1/3(999haから370haに)に縮小しました。そのうち高崎市街地のL1ブロックについては、720haから97haと1/7に縮小されています。この時、氾濫面積が縮小されても費用対効果はほとんど変化していないことについて河川課は、氾濫面積から外された区域は氾濫水深が浅く被害が少ないため、と説明しました。しかしそれは適正な説明ではありません。費用対効果がほとんど変わらなかったのはR1ブロックの面積変更がなかったためです。資料1が示すように、R1は費用対効果を考える上で最も重要なブロックなのです。河川課は説明責任を適正に果たしていません。

必要性のない倉渕ダム計画は即刻中止を
 倉渕ダムは付替え道路工事費の大幅増額などから事業費が当初の275億円から400億円に変更になりました。このため治水方式の検討において、ダム案より単独河川改修案の方が高くつくとするためには何らかの操作が必要となり、宅地の用地費を1u当り20万円と破格な設定をして開示資料の差替えが行われました(差替え事件)。また榛名町上大島地区では必要としない広大な河川改修面積を設定しています。さらにダム案の費用対効果を1以上にするために、氾濫の起こらないR1ブロックを氾濫区域に設定するなど、そのやり方はあまりにも不適切で杜撰です。倉渕ダムはこのような計画の上に造られようとしています。
 知事におかれましては、上記の現地調査をご自身で行い、このダムが本当に必要であるか否かの判断をしていただきたい。

以上  


費用対効果分析結果

■費用対効果分析結果

(単位百万円 
年超過確率
被 害 額
被害軽減額
同左平均
確率密度
期待額
同左累計
ダムなし
ダムあり
1/10 0.100 0.0 0.0          
1/20 0.050 64,900.0
199.0
64,701.0
32,350.5
0.0500
1,617.5
1,617.5
1/30 0.033 76,510.0 69,869.0 6,641.0 35,671.0 0.0167 594.5 2,212.0
1/50 0.020 102,510.0 93,386.0 9,124.0 7,882.5 0.0133 105.1 2,317.1
1/80 0.013 117,578.0 110,539.0 7,039.0 8,081.5 0.0075 60.6 2,377.8
1/100 0.010 203,611.0 116,793.0 86,818.0 46,928.5 0.0025 117.3 2,495.1

総便益;年平均被害軽減額24.95億円をダム完成から50年間を対象に現在価値化したものの総和。
       391.7億円 (24.95×15.7)
総費用;ダム事業費(治水分)とダム完成から50年間の維持管理費を現在価値化したものの総和。
       285.0億円
費用対効果; 391.7 ÷ 285.0 = 1.37


1/20までの被害額を0とした場合

(単位百万円 
年超過確率
被 害 額
被害軽減額
同左平均
確率密度
期待額
同左累計
ダムなし
ダムあり
1/10 0.100 0.0
0.0
         
1/20 0.050 0.0 0.0 0.0 0.0
0.0500
0.0
0.0
1/30 0.033 76,510.0 69,869.0 6,641.0 3,320.5 0.0167 55.5 55.5
1/50 0.020 102,510.0 93,386.0 9,124.0 7,882.5 0.0133 105.1 160.6
1/80 0.013 117,578.0 110,539.0 7,039.0 8,081.5 0.0075 60.6 221.2
1/100 0.010 203,611.0 116,793.0 86,818.0 46,928.5 0.0025 117.3 338.5

総便益;年平均被害軽減額3.39億円をダム完成から50年間を対象に現在価値化したものの総和。
        53.2億円 (3.39×15.7)
総費用;ダム事業費(治水分)とダム完成から50年間の維持管理費を現在価値化したものの総和。
       285.0億円
費用対効果; 53.2 ÷ 285.0 = 0.19

 
公開質問状

2003年11月14日 

群馬県知事 小寺弘之殿

群馬の自然を守るネットワーク 
代表世話人; 大塚一吉 武井謙司 田島三夫 山際義隆 


公 開 質 問 状


意見書をふまえ以下のことについて質問します。

@ 県は氾濫解析を行うに当たって信越線の盛土をどのような扱いにしているのか。

A 2000(平成12)年8月と2001(平成13)年10月に県が作成した倉渕ダムパンフレットにはいずれもR1ブロックが設定されていない。なぜR1ブロックを設定しなかったか。

B Aのパンフレットにおける洪水氾濫防止区域について、その算出根拠と費用対効果の値を示されたい。

C 県は烏川沿岸の地元説明会を2002年6月から12月の間に計8回行っている。各氾濫ブロックに関連する地区で行ったと思われるが、倉渕ダムの費用対効果においてL1ブロックに替わり最も重要な位置付けとなった北久保町と下豊岡町(R1ブロック)でなぜ開催しなかったのか。

D 県の計算した1/100確率の氾濫予想図によると、国道406号の西側地点(現況地盤高103.0〜104.0m)の氾濫水深が2〜3mとなっている。これは標高で表すと105mを超える高さまで烏川の水が増水することになる。(烏川に掛かる信越線鉄橋の標高は100m。)本当にこのようなことを想定しているのか。もしそうであればその根拠を示されたい。

E 1999(平成11)年7月に行われた再評価委員会の討議資料にある氾濫防止区域は、現在のものと著しく異なるがその理由を説明されたい。          以上

ご返答は11月25日までに、下記宛ご郵送願います。

 
 
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